抗がん剤による副作用として末梢神経障害(CIPN)があり、大きく3つに分類されます。
①感覚障害:手足の先がしびれる、ジンジンする、感覚がない、耳が聞こえにくい
②運動障害:手や足が動かしにくい、力が入らない、つまづきやすい
③自律神経障害:便秘、小便がでにくい など
これらの症状は副作用の中でも、すぐに命に関わることではありませんが、日常生活においては大きな影響があり、重要な副作用の一つと考えています。
症状の出現は総投与量との関係があることが多く、使用する薬剤によって発現状況が異なります。神経障害の検査として神経伝導検査はあるものの、専門医に紹介して検査・診断される場合除いて、抗がんよる末梢神経障害であると推測される場合は、実臨床で検査されることはほぼありません。
日本がんサポーティブケア学会より「がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き2017年版」が発行されていますので、詳細をご確認いただければと思います。
末梢神経障害(CIPN)の評価では、CTCAEの(下は v4.0)Grade分類が多く使用されているかと思います。
下記の神経症状-感覚性毒性基準 (DEB-NTC) を用いて評価している場合もあるかと思います。
CTCAEのgrade1での検査での評価を除いて、grade2以上については患者さんからの訴えをもとに評価することになりますので、患者さんから正確な状況を得るよう対応することが重要と考えます。患者さんの中には副作用をがまんして、医師へ伝えない、または上手く伝えられない場合があるかもしれません。
末梢神経障害を起こしやすい抗がん剤
パクリタキセル、アルブミン懸濁型パクリタキセル
ドセタキセル、カバジタキセル
ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンデシン、エリブリン
オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン
ネララビン
ボルテゾミブ、イキサゾミブ
トラスツズマブエムタンシン、ブレンキシマブベドチン
ガザイバ、ブリナツモマブ
エンコラフェニブ、ビニメチニブ
サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド
ニボルマブ、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ (免疫チェックポイント阻害薬については頻度は低いが、重篤なものが発現することがある)
など、多くあります。
これらの薬剤による末梢神経障害への対応としてすべきことは
①患者の声、訴えに耳をかたむけ評価する
②評価をもとに適正使用ガイドなどに従い、休薬または減量を考慮する
③grade3まで進行してしまうと、休薬しても中々改善するまでに時間を要するため、grade2までで何とか押さえられるよう評価し、対応する
治療薬選択時に、患者さんの生活スタイル(仕事内容、生活環境など)を考慮し、患者さんの理解を得たうえで治療方針を決定することが望ましいと思います。
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