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ドセタキセルによる浮腫にフロセミドを使用するときの注意点

押さえておきたい基本的知識

ドセタキセルを投与中の患者さんの中に、身体の浮腫(むくみ)を訴える方がおられます。

ドセタキセルによる浮腫の原因と対処

ドセタキセルによる浮腫は fluid retention syndromeと呼ばれ、毛細血管透過性の亢進が主たる原因と考えられています。

用量依存性に生じ総投与量が 300∼400mg/㎡ に達すると、組織間液圧が低下し、間質へのうっ血とリンパ管への還流障害が起こり、血管内から間質への体液移行が促進しすることで、細胞外浮腫を引き起こすのではないかとされています。(Brønstad A, Berg A and Reed RK.: Effects of the taxanes paclitaxel and docetaxel on edema formation and interstitial fluid pressure. Am J Physiol Heart Circ Physiol, 287, 963―968, 2004.

ですので、ドセタキセルを投与開始した患者さんの体重の変化や身体、特に下肢のむくみがないか自分で観察するよう指導し、来院時に確認すると早期発見・早期対応につながると思われます。

ではドセタキセルを投与して4~5回投与後に、体重の増加と下肢のむくみに気がついたときの対応はどうしたらよいでしょうか。

まず最初に浮腫の原因が何か考えます

  1. 血管内膠質浸透圧の低下(低蛋白血症)
    1. 腎,消化管から蛋白漏出
    2. ネフローゼ症候群,蛋白漏出性腸症
    3. 肝における蛋白合成低下
    4. 肝硬変蛋白質の摂取不十分
  2. 血管内静水圧の上昇
    1. 循環血漿量の増加
    2. 腎不全,急性糸球体腎炎,心不全
    3. 薬物(NSAID,エストロゲン,ADH,甘草,経口避妊薬,β 遮断薬,ACE 阻害薬),妊娠,特発性浮腫(下肢)
    4. 静脈還流の障害
    5. 肝硬変,肝静脈閉塞,心不全,静脈血栓,外傷,腫瘤,高度肥満
  3. 間質液膠質浸透圧の上昇
    1. 血管透過性の亢進
    2. 炎症,外傷,熱傷,アレルギー,血管神経性浮腫(Quincke 浮腫)
    3. リンパ流の障害
    4. 癌のリンパ節転移,悪性リンパ腫,手術,外傷
    5. 間質にムコポリサッカライドの沈着
    6. 甲状腺機能低下症(粘液水腫)

などがあるとされています。なかなか全てを鑑別することは難しいかもしれませんが、これらの要因をもとに対応を検討するとよいかと思います。

浮腫がドセタキセルによると判断される場合は、デキサメタゾン(8~16mg/分1~2回/day)等を、ドセタキセルの投与翌日から2日間程度(または前日から3日間程度など)の投与を検討してみるとよいとされています。

発現した浮腫の症状に対して、利尿薬を短期間、投与することも検討します。

浮腫に対して利尿薬を安易に使用してはいけない場合

大動脈弁狭窄症とされています。大動脈弁狭窄症は大動脈への血流量が低下して体循環全体が血流不足となった病態です。ですのでフロセミドなどの利尿薬を病態にそぐわない量を使用すると、さらに水分を排出し血液の量を減らすことになり、左心室から送り出す血液量も減り、ショック状態となるリスクが高まるためとされています。医師へ処方提案する際は、併存疾患をしっかり確認するようにしましょう。

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