トラスツズマブの作用機序は、①単球ならびにNK細胞のFc受容体を介した抗体依存性細胞障害作用(ADCC)を増強と②HER2との結合により下流のシグナル伝達を阻害して腫瘍増殖抑制効果が考えられています。HER2とHER3などのヘテロ二量体の結合が抑制され、その結果、下流の細胞増殖に関わるシグナル伝達を抑制が作用機序と考えられています。
トラスツズマブはモノクローナル抗体のひとつで、ヒト化抗体(ヒト由来約90%+マウス由来約10%)に分類されます。モノクローナル抗体製剤による特徴的な副作用として、インフュージョンリアクションがあります。トラスツズマブはヒト化抗体のためそれほどインフュージョンリアクションを起こす患者さんに遭遇する機会は少ないかもしれませんが、初回および2回目までの発現頻度が高い傾向にあるため、特に注意が必要と考えられています。ですので投与開始から15分間はできるだけ目の届く範囲にいて症状の有無を確認し、そのモニタリング記録もカルテに残した方がよいと考えております。
介入ポイント①
インフュージョンリアクションは、その字のとおり注入による反応ですので、注入速度が影響し、特に投与速度をアップしたときに発現する場合があります。インフュージョンリアクションを起こした場合の対応として、症状が軽度(grade1程度)であれば、速度をゆっくりにして(2倍で程度にするなど)投与すれば症状の発現が見られなくなったということを経験しています。症状が軽度であれば次回投与について主治医と検討の上、抗アレルギー薬やステロイドを予防投与し注意深く投与するということをしますが、十分な根拠がある対応とはされていませんで、その点をご留意ください。
介入ポイント②
注意すべき副作用として、心障害があります。臨床現場で頻繁に遭遇することはなく、忘れたころに発現するというイメージがあります。ですのでトラスツズマブ開始前には心機能検査を実施してベースの心機能を確認しておきます。定期的に心機能検査(心エコーなど)を実施し、計画立ててモニタリングします。
心障害のリスク因子として
アントラサイクリン系薬剤の併用または治療歴、心不全症状、高血圧、冠動脈疾患の既往/合併や、胸部放射線療法の併用により、心障害発現のリスクが高まる可能性があります。
心障害については、別に記事を書きたいと思います
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