薬学生への実習のひとつとして、「がん告知」と「死生観」について考えてもらっています。がん患者さんとの服薬指導の途中で、ふいに「私ってもうどのくらい生きられるのかしら」と言われたらどう答えますか?突然そんなことを言われたらびっくりしますよね。
これまでの治療状況、現在の治療と全身状態からおおよそこれくらいだろうという予想はできるかもしれません。余命について患者さんにしっかりと真摯な態度でお伝えできるのは医師だけです。薬剤師にはできないことです。
先ほどの質問ですが、患者さんは本当に残された時間がどれだけなのか知りたいのでしょうか。正確な余命知りたければ主治医に尋ねるでしょう。患者さんは何か他に気になっていることがあるのかもしれません。そういった質問に対しては「何か気になるご予定がおありでしょうか?」とこう返すとよいと思います。そして患者さんの思いをしっかり聞いて、その思いを実現するために薬剤師としてできることを考えてみましょう。
死生観について考える
がん患者さんからの死に関する突然の質問にうろたえないために、死生観について考えておくことは医療従事者として必要だと思っています。「死生観」とは「自己の死を直視し、死ぬまでの今をどう充実させて生きるかという自分の考え方」のことをいいます。
以下は薬学生に考えてもらっている内容ですが、この記事を読んだ方は是非、一度じっくり考えていただければと思います。
①自分ががんになったときのことを考察してみましょう。あなたは、がんが見つかり医師からは早めの手術をすすめられています。さてあなたは、手術をしますか、しませんか、その理由は?
②がんの手術後、リンパ節に転移をしており、早くて2ヶ月、普通だと半年、長くて1年の命だとわかりました。医師からはがんの進行を止めるために抗がん剤の使用を勧められました。抗がん剤を投与受けますか、受けませんか、その理由は?
③自分の余命が早くて2ヶ月、普通だと半年、長くて1年だとして、あなたが死ぬまでに最高に充実した24時間を過ごすとしたら、どんな24時間でしょう。最高に充実した1日を具体的に書いてみましょう。
④手術後1ヶ月が経過した現在、体は少しやせたものの体力は徐々に回復してきており、激しい運動はできませんが、普通の生活ができるまでになりました。さて次のことについて考えてみましょう。
- 死ぬまでどこで、誰と暮らしていたいですか。
- 死ぬまでに行っておきたい所はどこですか。
- 自分の症状を知らせておきたい人は誰ですか。
- 死ぬまでに会っておきたい人は誰ですか。
- 死ぬまでにやっておきたい事は何ですか。
- やり残す事になるのは何ですか。
本日の内容はやや重い内容になりました。やってみると結構、難しいです。ですがきっと明日からの患者さんとの対応に役立つと思います。
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